映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」ネタバレ感想/ひとりで戦う人生賛歌

世界の甥っ子ことトム・ホランド主演の「スパイダーマン」シリーズ3作目、観てきました。

2作目の「ファー・フロム・ホーム」のラストがしんどくて「3作目見るの怖い…」と思っていたのですが、見てよかった。
本当にお見事なシナリオ…
ここまで見てきたMCUの集大成だった。
「卒論じゃん」って言っちゃったよ。

個人的に今まで見てきたMCU作品でトップ3に入るくらい好きです。
話がとにかく面白いし、演出も理にかなってるし、終わり方も必然的で美しい……

これ見る前にディズニー+で「ワンダヴィジョン」と「WHAT IF...?」を一気見していったんですが、結果的に正解でした。
見ないと話が分からないということは一切ないんですが、
マルチバースがあるんだよ」というMCU文法をスムーズに受け入れられたので、見やすかった~。

というわけで感想記事です。

 

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【はじめに】

今回も鑑賞済みの方向けに書くのであらすじとかキャストとかは省略します。
必要なリンクだけ貼っておきますね。

youtu.be

www.spiderman-movie.jp

以下はネタバレを含みます。

最後のほうに「WHAT IF...?」のネタバレにも触れていますが、
うす~い文字で書いておきますので、
読みたくない人は薄目でさーっと飛ばしてください。

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トムホピーターの辿る道筋と今作の結末があまりに壮絶なので、

「な~~にがノーウェイホームじゃうちの可愛いピーター君に何てことしてくれてんだホームカミングさせろバーーーカ!!!

と叫びたくはなりました。

でもお見事、本当にお見事なシナリオライティングだよ…

この話をやるためにMCUはこれまでのことを描いてきたと言ってもさほど過言ではないと思う。
トムホスパイダーマン過去2作だけじゃなくてIWとかEGとか含めて。

見ながら5回くらい泣いたし、隣のお嬢さんも泣いてハンカチ取り出してたし、
劇場も結構すすり泣きが聞こえてきました。
そりゃ泣くわ。

【トニー・スタークの不在】

・まだ10代の子どもなのに社会からひどいバッシングを受けたり、
どうしても譲れない「目の前で死なせずに済む命があるなら死なせちゃダメ」って信念のためにメイおばさんを喪ったり…
・とにかくピーター・パーカーが気の毒で、もう見ててずっと
「トニーなんでいなくなっちゃったの帰ってきてよトニー…」
って思ってた
・ピーターのこと本当に強力に守ってくれてたんだよなトニー・スターク…

【みんなに忘れられるヒーロー】

・最後の最後にみんなの記憶から消えてしまうことを決断するピーター、
めちゃくちゃ一人前のヒーローだよ
・本編ずっと10代の男の子だったけど、
ドーナツ屋でMJとネッドが平穏に暮らしてるのを見て「これでいいんだ」って顔になるとこは大人びてた
・ピーター…ほんとに大人のヒーローになっちゃったね…

・みんなの記憶から消えちゃうヒーローって個人的にも大好きだけど、それはそれとしてなんとかならんのか
・ファンタビではなんとかなったじゃないですか(なんとかなったとは言ってない)
・「○○○(某名作ゲーム)じゃん…」と思いました。いや状況だいぶ違うけど
・見てるこっちの「みんなが忘れちゃっても私が知ってるよおおおお」って気持ちがね

【過去作のスパイダーマン

・散々噂されていたので2人のスパイダーマンが出るのは分かってたんだけど、こんなにがっつり出るとは思わなかった
・もっとゲスト的なのかと思ったら後半主役じゃん!!ゴージャス…

・私は無印スパイダーマンアメイジングスパイダーマンも未履修なので2シリーズの機微はわかってないんだけど、それでも
落下するMJの命をガーフィールドスパイダーマンが救う
というシーンがどういう意味をもつのかはきちんと理解できるように作られてて親切だった
・話知らないのにあのシーンのガーフィールドさんが泣きそうになるとこが素晴らしくて胸を打たれた
アメイジングスパイダーマンも無印版も見てみようかな…

・「自由の女神像の場所で3人が会話するシーンは、MCUスパイダーマン映画としては破綻しているくらいに長い。でもこれがみんなの見たかったもの」
というようなレビューを見かけたけど本当にその通りで、
あのシーンを削ったとしてもストーリーは成立する
・でもそれをがっつり入れた心意気が好きだ…
「丁寧」「誠実に作られてる」という評もその通りだなと思う

【マット・マードック弁護士】

・これもなんとなくネットの反応見て「出るっぽいな」とはわかってたんだけど、
せいぜいエンドクレジット後の映像にちょろっと出てくるくらいで、
正直本編に出てくるとは思ってなかったから完全に油断してた
・「弁護士が必要だな」って台詞があったとこで予想してしかるべきだった…!!
・出てきた瞬間声上げそうになって両手を口の前に構えちゃったよ…
・マット・マーーーーーードッッッック!!ついに!!!待ってたよ!!!

・相変わらずニコニコしてて親切そうなのに底知れない雰囲気があって大変よかった
デアデビルでいうとどの辺の時間軸なんだろう
・ていうかマットさんってサラサラした側の人?しなかった側の人??
・投げ込まれたでかい石をノールックでキャッチしたあと、
「どうやったの?」って聞かれて「僕は腕利きの弁護士なんです」ってだけ返すの好きすぎる
・かっこいい 最高 好き 弁護士はそんなことしません

・その後怒涛のヴィラン続出祭りに「デアデビルさん呼んできて!!」って思ったけど、
あまりに敵が強いので「やっぱ呼ばないでいいです!!!」って思いました
デアデビルさん耳がいい以外は腕力とか防御力とか基本生身の人間の範囲内なので…

ウィレム・デフォー怖すぎ】

・とにかく演技の精度がすさまじくて今回一番怖かった
・グリーンゴブリンとノーマンの演じ分けがえげつない
・演技うますぎる人見ると怖くなってしまう…(※)

・今回はトムホスパイディがスパイダーセンスで異変を察知してグリーンゴブリンの手を壁に縫い留めて、
正体を現したときのシーンがめちゃくちゃ怖かった
・「同じウィレム・デフォーの中に全然別の人が入って喋ってるんだ…」
とあそこまではっきり感じられるのマジで異様だと思う

※「演技うますぎて怖い」と思ったシリーズ

ダークナイトライジングで背骨折れたまま天井に吊られるシーンのクリスチャン・ベイル
(背骨折れたまま天井に吊られたことあるんですか?)

ブラックパンサーで脊椎撃たれて床に倒れ伏して浅い呼吸を繰り返すシーンのマーティン・フリーマン
(脊椎撃たれたことあるんですか?)

・エンドゲームで5年経った娘と再会したシーンのポール・ラッド
(5年灰になったあとに娘と再会したことあるんですか?)

・ラブコメ映画で「君の瞳に恋してる」を歌うかわいいヒース・レジャー
(ジョーカーしか知らんかったのでこのシーン見て怖くなった。すごく普通の人じゃん。普通の人がなんでジョーカーになれちゃうの?)

【スティーブン・ストレンジという男】

・ストレンジ先生が
「サーをつけるな」
「サーをつけろ」
と振り回すとこ本当にも~~~!!こ~の傲慢医者は~~~~!!!って感じなんだけど、
最後に「スティーブン」と呼ばせるとこ、
ピーターのことを本当に案じて涙ぐんでいるのがやっぱり先生だった

・自分第一で他人の都合考えてなくて、
やれないかやれるかってときに「やったらやばい」ことよりも「やれる」ことだけを優先してやってしまうストレンジ先生
・でも同時にとっても情が深い人なんだよ

・やれることが多いし大規模だから、重い決断を下すことからも逃れられないヒーローで、
でもそこになんとも思わずにいられるような人じゃないのがストレンジ先生なんだよな…

ドクター・ストレンジvsスパイダーマン

・この対戦カードが見れたのもすげーよかった
・正直ストレンジ先生相手に勝てるヒーローあんまりいないだろと思ってたんだけど、
なかなかどうしてスパイディ強いぞ!魔法より強いのは数学!

・ミラー次元のシーンはきっちり「ドクター・ストレンジ」1作目の文法で映像が作られていて非常によかった
・場面設定的にも
スパイダーマンドクター・ストレンジ支配下にあるミラー次元の中に入り込んでしまった」
ことになってるし、絵面も
スパイダーマン主演映画に出ていたはずのスパイダーマンが、ドクター・ストレンジ主演映画の中に入り込んでしまった」
状態になってて、シチュエーションと演出の精密な合致に大拍手

トム・ホランドの真骨頂】

・トムホがとっくに成人してること何回も忘れちゃうんだけどマジで何?

・メイおばさんが亡くなるとこ、
トム・ホランドの演技の真骨頂って感じで本当に勘弁してくれと思った
・なんで彼はああいう
「立つ場所を失ってどうしていいかわからなくて迷子みたいに泣く子ども」
になれるんだ…
・ホームカミングの一人でがれきに埋もれて泣くところといい、
IWのサラサラする寸前でトニー・スタークに泣きつくところといい…

・sorryって小さい早口で何度も何度も繰り返すとこがあまりにもつらい
・ごめんなさいごめんなさいごめんなさいって…グエエ…
・あそこ脚本でもああいう書き方してるのか、
トムホがアドリブでああやって早口で繰り返したのか気になる。
今回一番つらかった

・メイおばさんのシーンもそうだし、
そのあとMJとネッドに見つかって抱きしめられて泣き出しちゃうとこも本当に子どもらしくてすごかった。
マジで17歳にしか見えなかった

【自分自身と励まし合い困難に立ち向かう】

・まだうまく言語化できないんだけど、今作の
「3人のピーター・パーカーが、別の世界に生きている自分と深い悲しみを共有し、
互いに励まし合い力を合わせて困難に立ち向かう」
というストーリーが、
ある種の強力な人生賛歌になっているようでとてもよかった

・ヒーロー映画では仲間との絆やたった一人の大切な人との愛を力強く描くものだけど、
一方で孤独に戦わなきゃいけないときがある

・メイおばさんとの別れはピーターにとって、
もしかしたらMJやネッドとさえ分かち合えない悲しみだったんだけど、
そこに2人の別軸のピーター・パーカーがやってきて、大切な近親者を喪うことをお互いに話す…
というのが奇跡的な慰めになる
・それで3人がピーター・パーカーとしての人生、スパイダーマンとしての人生を打ち明けながら装置を修理して、決戦の地に挑み、協力して打ち勝つ

・ここが「仲間と協力して立ち向かう」だけじゃなくて、
「同じだけど異なる自分自身と協力して立ち向かう」のがいいなと思った

・3人のピーターは同じピーターなんだけど別の人生を歩んでるから、
能力も友達も戦った敵も喪った人も違う
・でも彼らは
スパイダーマンとして覆面をかぶって、みんなの親愛なる隣人として敵と戦っていて、大切な人を喪った」
といった大きな共通項で結ばれて、
お互いがピーターであることを受け入れてる

・ヒーローは孤独に戦わなきゃいけないけど、きっと一人じゃない。
同じような境遇で戦ってる人がどっかにきっといる

・現実に生きてる我々はマルチバースの自分に出会うなんてことはないんだけど、
でもたとえばネットの相談ページ検索して
「あ、私と同じことで悩んでる人がいるな」
とか思ったりするときあるじゃん
・喜びも悲しみも分かち合える友達や家族がいたらそりゃいいけど、
たった一人で悲しみを背負わなきゃいけないとき、
「きっとどこかに同じ境遇の"僕"がいて、がんばってるはずだ」
と思えることって大きいし、
それを2022年にスクリーンに載っけるのって人生賛歌だなと思ったのでした

・「ノー・ウェイ・ホーム」がそれを意識的に前面に出して描き切ってるわけではなくて
(もしそれを主題にするならラストシーンにもうちょっと2人のスパイダーマンの名残を残すはず)、
むしろ最後に言いたかったのは
「トムホスパイディは完全に孤独になったよ、それでも彼はヒーローであることをやめないよ」
だとは思うんだけど
「自分自身と対話してがんばって前進する」
って単に個人的に好きなテーマだからぐっと注目してしまった
・分断や孤立が加速したコロナ禍に勇気がもらえるなあと思って嬉しくなったよ、ありがとう
・「♪フレーフレーこの私よ そしてフレー私みたいな人」ってやつですよ…
ポルノグラフィティ「テーマソング」)

【そして次のMCUへ】

・ラストはほぼ「ドクター・ストレンジ2」の予告編がまるまる入ってた
・私は「ワンダヴィジョン」を見た側の人間なのであそこでワンダちゃんが出てくる理由はわかりました!!!

・「WHAT IF...?」を見たおかげで今回のマルチバースもすんなり受け入れられた。
今回のも要は「WHAT IF...?第10話、もしスパイダーマンヴィランを救ったら…?」って内容だもんね
・私がこの系統の話に免疫あるのは、元をただせば「うみねこのなく頃に」のおかげだし、
さらに言うと「パーソン・オブ・インタレスト」のシミュレート回のおかげなんですけど

・あとあんまり関係ないけど、
「インフィニティ・ウォー」~「エンドゲーム」まであんだけサノスのこと深刻で最悪の人類の敵って感じで描いてたのに、
その後「WHAT IF...?」でもスパイダーマンでも「紫の宇宙人」とかめちゃくちゃネタっぽい扱いされてるの笑う。
笑うけど笑いごとじゃなかったんだよこっちはよォ!!!私は全然許してねーからなアゴ洗って待っとけ!!!!

【WHAT IF...?のネタバレ】

※ネタバレなのでうす~い文字で書きます※

・エンドロール後というか、ドクターストレンジ2予告に出てきた髭の長いストレンジ先生は「WHAT IF...?」の闇堕ちストレンジ先生かと思ってどきどきした

・未見だけど「スパイダーバース」といいNWHといい、
マルチバースで別軸の同ヒーローが共闘する話がこんな風に作れるのは、
ひとえにピーター・パーカーの人徳だよなと思いながら見ていた
・「同じクラスにいるいいやつ」だから…
・ピーター同士でちゃんとコミュニケーションとって結束してくれるからこんなにスムーズにいくわけじゃん

・ネッドの家でガーフィールドスパイディとマグワイアスパイディが対峙するシーン、
親切でいいやつなピーター同士だから一発早打ちするだけですぐにお互い敵意がないことを察して打ち解けたけど、
あれほかのヒーローだったらネッドの家ぶっ壊れるまで暴れてからじゃないと話し合えなさそう

・別軸の自分と会ってもなかなか連携しなさそうなヒーロー多いんだよなMCU
・トニーも…ソーも…ストレンジ先生も…と考えて
「WHAT IF...?」第4話の結末を思い出してぞっとしていたのでした
・ストレンジ先生、自分と会ったときも話し合いで解決できずに世界破滅させて自分も閉じ込めてバッドエンドだったよな…と
・これを思い出した直後にあの予告編が来て髭もじゃのストレンジ先生が映ったのでウワアアアアアアとなったのでした。あれ誰なの。マジで怖い。すでにホラーだよ

※ネタバレおわり※

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という「ノー・ウェイ・ホーム」の感想でした。

一応これで三部作完結と聞いてるんですが、今後どうなるんでしょうね。
めちゃくちゃきれいに終わったなと思いつつ、もっとトムホスパイディの活躍が見たいような…

そしてまずは「ドクター・ストレンジ」が怖すぎるんだよな…

ディズニープラスでドラマがいくつも始まると聞いた時は「追い切れるかな」と思ったのですが、意外といけそう。次はどれ見てみようかな~。

とにかく、ピーター・パーカーに「お疲れ様」と言いたい。ほんとに。体を大事にしてほしい。
君の幸せを願っているよ…。