映画「フリー・ガイ」ネタバレ感想/フィクションのキャラクターだからこそ描けるテーマ

「フリー・ガイ」、ゲーム世界の話だっていうし、ライアン・レイノルズ主演だし、ライトゲーマーとしては見に行ってこよう~!
と楽しみに見に行ってきました。

そしたら面白いし楽しいしよくできてるし、予想外にぶっ刺さって
「今年見た映画のなかでベストかもしれん……」
と泣く羽目になった
ので、記録のために記事にしておきます。

元気が出る映画なのでおすすめです。
こんなご時世じゃなかったら「今すぐ見て!!!」って言いまくるんだけど…

本記事はネタバレしまくるので、鑑賞後にどうぞ。

 

あと記事を始める前に…

ゲーム世界に生きるモブを描いた映画「フリー・ガイ」がすげーよかったので、
みんなついでに死に覚えゲー的なデスループから脱出を目指す映画「コンティニュー」も見てくれよな!!

映画「コンティニュー」ネタバレ感想/明るく楽しいデスループエンタメ - 推し全肯定bot (is painted blind)

 

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【はじめに】

今回も鑑賞済みの方向けに書くのであらすじとかキャストとかは省略します。

必要なリンクだけ貼っておきますね。

youtu.be

www.20thcenturystudios.jp

 

以下はネタバレを含みます。

 

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「現実の人間にNPCが恋をして、設定されていない行動を起こし始める」
で始まるから、落としどころとしては

NPCが現実世界に出現して恋を成就させる
②人間がゲーム世界に飛び込む
③二人は結ばれない

のどれかかな~と思ったのに、
形としては③に近いけど③のもっと先を見せてもらえるとは思わなくて、終盤ボタボタ泣いてしまった。
すごい刺さっちまったよ……

取っ散らかった感想を箇条書きします。

 

ライアン・レイノルズのこと】

・モブキャラの表情がやたらうまくて笑った

・笑いたいから笑ってるんじゃなくて、そう設定されたNPCだから笑顔になってるっていう感じが絶妙…

・それがミリーに出会ってからは表情のパターンが増えて、後半ではしっかり生きた人間の感情で表情が動くのよかったよね

・隠れ家に潜入したミリーを助けに来たとき、ミリーの華麗な戦闘に見とれて
「う~~~ん♥やっぱり彼女最高だ~~~~♥」
みたいな顔してるのもすげー笑った

・顔面が漫画

【ガイとミリーの恋】

・ガイからミリーへの恋心がとってもピュアなのすごいかわいかった

・初めてキスしたときに「うわあキスってアイスクリームよりも最高!」って感想が出てくるのかわいすぎん?

・ガイの口から語られる「理想の女性」像にも、実際にミリーに出会ってからのミリーへのアプローチにも、性的な言及がほとんどなくてそれもすごくよかった

・途中で「ガイは4年前に生まれたから4歳だし」っていうとこで納得もした
(そしてワンダとヴィジョンちゃんに思いをはせた)(MCUテメー一生許さねーからな案件シリーズ)

・それに対してミリーが「4歳だと思うとちょっとあれだね」と反応してたのも信頼がおけた

・まあガイ→ミリーの恋愛描写で性的な言及がない分、チャニング・テイタム→ガイへのアプローチで言及はありましたけどね 大爆笑しました

チャニング・テイタムまじでノリがよすぎ

・感想で見かけたけど彼の運動神経を有効活用しすぎなアクションに笑ったし、謎すぎるくねくねモーションも人間離れしてCGキャラっぽくて笑った

・あんな気持ち悪い動きノリノリでやってくれるのテイタムだけだよ


【その他こまかいとこ】

・作中のプレイヤーの動きもオンラインゲームの治安悪い部分出ててよかったね

・殺した相手を煽る動作とか、道端でジャンプの練習かなんかしてるプレイヤーとか

・全然気づかなかったけど感想あさってたら
「ミリーからガイへのキスは、武器をぶっ放してガイがのけぞってよけたところを胸倉つかむモーション入れることで顔をくっつかせるっていう、もともとある動作を組み合わせて強引にキスの形にしてるのがゲームっぽい」
という指摘があってすげー面白かった

・なるほど…!!キスコマンドはないんだもんね

カメオ出演

・誰かのカメオ出演があるらしいとは聞いていたけどクリス・エヴァンスは予想してなかったよ!!!

・インタビュー読んだら「ジョークのために出て」って声かけられて、何の映画なのかもよく聞かずにホイホイ出てくれたんだってね 気さくすぎ

・カメオてっきりヒュー・ジャックマンかなと思ってたわ……

・と調べたら彼も出てたんだね!!路地裏で情報くれるキャラクターの声か!!気付かんかった

・ロックさまも気づかなかった もうやりたい放題だなおい

【映画ネタ】

・MCUとスターウォーズネタが婉曲なやり方ではなく武器そのもの、音楽そのものずばりを出してくるとこはさすがに笑った

・FOXがディズニー傘下に入ったから実現したことで、それに対する褒めも苦言も読んではいるんだけど、盾が出たあの瞬間は何も考えずただただ笑いました。ありがとう

・そして「この映画の中に、MCUとスターウォーズどちらにも足突っ込んでる人が一人いるな…」とワイティティのことを考えていました。ほかにもいたらごめん


【ワイティティ】

タイカ・ワイティティはさ…

・なんなの?

・実はタイカ・ワイティティの演技をまともに見るのが初めてだった(コーグは見てるけど)ので、それもあってインパクトがでかかった

・アントワンう、うぜえ~~~~~~~!!!!って感じで最高でした

・やたらと人目を引き付けようとする物言いとか芝居じみたパフォーマンスとか、やっだっな~~~こういう社長いると、って感じで…

・ワイティティよ、あれは誰がモデルなんだ…

・いやもちろん脚本家の意図したアントワン、監督の意図したアントワンがそもそも「いそうでやだよねこういう社長」っていう像を描いてるんだろうけど、
それらを読み取って自分の上で像を結ばせたワイティティ…

・あの妙な実感を伴うアントワンがすごいなと思って

・オフィスの地面で集中!と座禅くんだりころーんと寝転がったり思いついた!と立ち上がろうとしたり、
自分が来ると常にオフィスはみんな俺のこと見てるでしょ?みたいな態度だったりパワハラ罵声浴びせたり、
「動画とかでユニーク社長キャラとして見る人たちからは一定の人気を得るだろうけど、こいつの下で働くのぜって~やだな…
という感じがよかった

・ワイティティが出るのは知ってたんだけど何役か知らなかったし、アントワン初登場時しばらく顔を見せないカットが続いたのもあって予想できず、顔映った瞬間
「ワイティティこ、この役かーー!!」
って声出しかけた

・いま公式サイトのアントワン紹介見たら

「大声で、がさつ、不快、口汚いナルシスト。」

って熱いdisが詰まってて笑った

www.20thcenturystudios.jp


【一番ぶっ刺さったとこ】

・あの………………ミリーとキーズのことなんですけど

・完っ全に油断してたのでマジでこの二人、というかミリーとガイとキーズの三人にぶっ刺されてしまって………

・素直な視聴者なので、序盤でミリーとキーズのインタビューで
「二人の仲は…」
「いえいえ完全プラトニック、仕事仲間ですよ」
って答えてるのを鵜吞みにしてて

・「同じ仕事に取り組んだ恋愛要素なしの元バディ男女、いいじゃない…!」と思い込んでたんですよね

・だからこの作品における恋愛のテーマはミリーとガイにピント合わせてるんだなと思ってたんだよ最後まで

・そしたらピントずらしが来るじゃん………そう来ると思わなくてびっくりしたんだよ本当………

 

・アントワンを止めて、二人のオリジナルのゲームが大ヒットしてめでたしめでたし、のとこまで来て、
当然「じゃあガイとミリーの恋はどうなるの?」と気になるんだけど

・直前でミリーに「コーヒー一緒に飲みに行かない?」って誘うキーズが見られるので、
「おや、ミリーとキーズの話に持っていくのかな」と、この時点では少し意外だった

・意外っていうのは、観客の視点から行くと主人公であるガイとミリーの恋を応援したくなるから、
「えー結局現実の男とくっつくのかよ!」
という反発が出そうなのにそっちに行くの大丈夫…?という心配に近い

 

・キーズからミリーへの思いがここまであまり強調されなかったのも効いてたんだよね…

・コーヒーに誘うとこで「キーズやっぱりミリーのこと好きなんかな?」とは思ったよ、思ったけど

・でもまあこの時点ではどのくらい真剣なのかわからんというか、
「女子といい感じになったらとりあえず攻めとくか!あわよくば彼女できるし!」
くらいのノリかもしれないと思ってて

・そしてこのシーンのマウサーがめちゃ好き

(彼女、やっぱお前に)(ラブだよ)(絶対そう)(いっとけ、これはもう勝ち確)
みたいな顔とジェスチャー笑う

 

・で、キーズ→ミリーへの思いがまったくミリーに届いてないし、ミリーはガイに積極的に会いに行こうとするので、
「やっぱりガイとミリーの話が主軸なのか」と思わされて

・でも二人の会話は「ずっと一緒にはいられない」っていう回答になる

・だからこの時点で「③二人は結ばれない」、
もののけ姫で言うところの森とたたら場で暮らそう、会いに行くよ…オチかなと思ったんすよ

・ガイとミリーは森とたたら場END、
ミリーとキーズはこの後進展があるかもね~くらいで匂わせENDかなと思った

・思ったんだけど!!!

・そしたらそこで終わんね~~~んだよな~~~~~!!!!

 

・「僕は君へのラブレターだよ、君を思う外の誰かが書いた」

・今んとこ2021年に出会った台詞でもトップを争う美しい台詞でした

・この台詞があまりに胸にぶっ刺さったせいでこっからずっとエンドロールまでダバダバ泣いてた

 

・「フィクションのキャラクターは枠物語の中身である以上、現実世界の人間とは違う次元に存在して、その壁を乗り越えることは不可能である」
というテーマは今までにも何度も描かれてきたけど
(可能である場合の作品ももちろんあるけど。「魔法にかけられて」とか)

・「フィクションのキャラクターは現実世界の意志ある誰かが作り出した以上、そこには現実世界の人間と同じ次元の思いが存在し干渉する
という側面をここまで無駄なく、そっと最後に花を添えるようなスマートさで出してくるのが…!!!

・お見事でございました………

・ロマンチックだよ、百億万点

 

・確かにキーズからミリーへの思いはここが初出じゃなくて、ガイがどうして自我を持ったのかという話の際に
「ガイの理想の女性は君をモデルにした」
って言われてるから、匂わされてはいるんだけど

・そしてコーヒーに誘うことで「どうやら実際に好意を持ってるんだな」というのはわかるんだけど

・でもあまりにさらっと流されるし、キーズがぐいぐい行かないから、そんなにすごい大きな愛だって判明してないんだよねこの時点まで

・でもそのぐいぐい行かないところはミリーがガイについて評する「害のない男」に当てはまるし…

・キーズのこの控えめな姿勢そのものも、ガイのキャラクター設定が
「理想の女性を身近に見つけていて、その人と結ばれるべく日々猛アプローチをかけている男」
にならなかったところと合致してるんですよね…

「理想の女性がいるけど、永遠に会えないし、まあそれでもいいと思っている」
というガイに自分の恋を重ねたあたりから読み取るに、キーズからミリーへの気持ちは「絶対落としたい女の子」じゃなくて、
「好きなんだけど、ちょっと実らなそうだし、まあそれでもいいと思っている」
だったんだろうと思う

・グウウウ~~~~~ッッ すみません萌えで苦しみました

・そんなガイとミリーがキスしたって聞いたら内心「エッ!?」って感じだったろうと思うと和むな…

 

・ガイに「僕は君へのラブレターだよ」と言われて、ミリーが改めてあのとき言われた言葉を再解釈する、という流れもめちゃくちゃ美しい…

・愛は日常に隠れている、あなたを愛する人はずっと身近にいる

・それでミリーが追いかけていくのも、そもそもキーズはミリーのコーヒーを買いに行ってるのだというところがまた切なくていじらしいんだよね

・身近な人からのアイラブユーは何かの会話に紛れ込んで知らないうちにもらっているかもしれないし、ゲームに夢中になっている誰かのためにコーヒーを買いに行くことなのかもしれない

・はあ……………………すみません萌えでため息が出ました

 

・私の好きな「ミッション:8ミニッツ」にも「コーヒーに誘う」という概念が出てくるんですよね

・人生で「アイラブユーではない愛の言葉および行動シリーズ」を集めてるんですけど、
この「コーヒーに誘う」という概念、もう本当大好きなので今作でも胸を撃ち抜かれましたですのよ……

 

・今作のすげーところは、ゲーム世界と現実世界をまたいだ恋愛で始めておきながら、
「あなたを愛してくれる人はずっと身近にいる」に両世界ともきちんと着地させたところで

・そういう愛はあまりにもさりげなく存在するからなかなか気づけないよねっていう…

・たとえば同じゲームを一緒に作って互いの才能を認めあったり、毎朝いっしょに同じ道を歩いて同じ銀行で勤めておしゃべりするのが楽しい相手だったり

・でもそういう人が、「彼の理想の女性は僕の隣にいる人をモデルにしたんだ」って種明かししたり、
困ってるときに家に入れて「俺がお前を助けようとしてるこの瞬間は本物だよ」って言ってくれたりするのは、まぎれもなくアイラブユーなんだよな…

・グエ……………………すみません萌えで呻いてしまいました

 

・今作のミリーとキーズの恋愛に関して「恋愛じゃないほうがよかった」という評もいくつか見かけたんですけど、私は恋愛であって非常によかった側の客ですね…

・なんでかってまあ「萌えるから」に尽きるんだけど、そこを何とか言語化しようとするとね

 

・キーズからミリーへの思いが友情なら別に隠す必要ないし、ゲームのキャラクターに自分の片思いを埋め込んだりしなくていいわけで、
埋め込んだとしてももっとオープンな
「いつも隣で一緒に仕事をしてくれる大親友のことが大好きなガイ」
とかで済んだはずなんだよね。というかこれは本編のガイにもちゃんとある要素だけど

・でもそうじゃなくて、「相手に言えない片思い」「理想の女性がはっきりしてるのに、その人とは永遠に出会えない男」にしてゲームに入れ込んじゃったから、
「会えない」はずの女性に会ってしまったガイがルーティンを外れて、そこから今回の話が始まるわけで…

・つまり、
「ミリーとガイがくっつかないから代わりに現実の男とくっつけとくか~!」
みたいな投げやりな構成じゃなくて、ちゃんと物語の作りそのものが

「相手(ミリー)に言えない片思い(キーズ)」

ありきになってて、そこがすごく好きなんだ……という話でした

・すべてが男女の恋愛に収束することはなく、ミリーとキーズに呼応するガイとバディのハッピーエンドでお話は幕を閉じるし、
作中で「セクシー」キャラが「誰とも付き合わなくてもいいのかも」と回答を出してるのがあったからこそ爽やかな気持ちになれましたね

 

・ごめんうまく言えない、やっぱ萌えるんだよな~~~~!!!!しか言えないわ

・片思いという概念が好きすぎて冷静に語れねえんだよ すまねえ

 

・とにかく本当に、めちゃくちゃ笑ったし楽しかったし燃えたし、
でも最後にすごいロマンチックなテーマが描かれるのを見ることができて、あまりに刺さってしまってぼたぼた泣きました

・今のところ2021年に見た映画でベストかもしれない。という思いで6000字近く書いてしまいましたよ……

・本当に映画館で見てよかった。吹き替えも見てみたいな…