「TENET」ネタバレ感想/綺麗に反転する世界

クリストファー・ノーランの作品が好きなのでずっと楽しみにしていた「TENET」。

コロナの影響で一時公開日が未定になったこともあり、ハラハラしましたが遂に観に行くことができました。

今回は先にネタバレなしの感想を書いて、次にネタバレありの感想を書きますね。
最初に言っておくと、分析とか批評ではなく「面白かったよね~!」的な感想文です。

 

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【はじめに】

今回も鑑賞済みの方向けに書くのであらすじとかキャストとかは省略します。

必要なリンクだけ貼っておきますね。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

youtu.be

 

 

 

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【ネタバレなしの感想】

すごすぎてわかんなかった。

ノーラン作品は「フォロウィング」から「ダンケルク」までだいたい履修してるんですけど(「インソムニア」だけまだ観てない)、
今まで観てきた中でダントツでわかんなかった。

●TENET観る前
メメントインセプションインターステラーダンケルクも初見でわかるように親切設計されてたから大丈夫でしょ」

●TENET観てる時
「何が起きてる?????」

●TENET観終わった直後
「何が起きた?????」

●TENET観終わって10階分くらい非常階段降りた後
「てねっとのぱんふください(両目グルグル)」

↑こんな感じだった。目回ってたのは非常階段グルグル降りたせいですけど。

今までで一番難しかったどころか段違いだった…
ノーラン検定3級は持ってる自負あったんですが、「TENET」はノーラン検定2段持ってる人向けではないでしょうか。
それとも私がノーラン検定3級持ってるのは錯覚だったんでしょうか…

本当は最速で金曜に観たかったのですが、どうしても初見IMAXを譲りたくなくて少し出遅れたんですね。
そしたらネットでうっかり断片的な情報をいくつか見てしまって、

「やっぱり早く観に行くべきだったかな~予測できちゃったよ~!」

と後悔もしたんですけど、
私が予測できてた展開はせいぜいコップ1杯分くらいなもので、映画全体の情報量がナイアガラの滝みたいだったのでそれどころじゃなかったです。よかった。

 

ネタバレなしの感想だとこんなとこ。
ここから下はネタバレありの感想になりますのでご注意ください。

 

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【ネタバレありの感想】

正直初見では全然感想が整理しきれないので、思いつくままに箇条書きで並べていきます。

記事の最後は私のわかんなかったことリストとか出てきますがそこは読まなくて大丈夫です。無限に続く気がするので。

あと文中にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.2」赤石路代「その日は金曜日」のネタバレがあるのでご注意ください。

 

◆わかんなさ、好きです

・「インセプション」や「インターステラー」が観終わったときに「疑問3個くらいあるな」と感じたレベルだったところ、
「TENET」は「わかったところが3~5個」って感じだった
・疑問が500個くらいある

・どこに誰がいるのか全然わかんなかった…!!
・ここに名もなき男は何人いるの?いつの時点の名もなき男?みたいにずっと混乱していた

・逆行してるか順行してるかは動きや酸素マスクや色で分かるんだけど、特に「今は何を目的に行動しているのか?」に追いつけない瞬間が多くて、とにかく画面の中の出来事を追いかけるのに必死だった

・わかんない作りにすんじゃねえ!という意味ではなくて(そういう批判もあるだろうけど)、単に私の場合はこんなに
「わからん!俺を置いてくな!
となる映画をあんまり見たことがなかったので、新鮮で楽しかったです!ということでした

 

◆ノーランがノーランしてる

・話題になっていたボーイングどかーんシーン、予告編で観てたはずなのにIMAXで観てあまりの迫力に

「の、ノーランさんマジでやんのこれ飛行機、まさかやりませんよね、さすがに実写なん…ちょっ待っ…これ実…の…ノーランさーーーん!!???

って両手を握りしめてしまった

 

◆ヨーランソンの音楽

・めちゃくちゃいいじゃん!!??!?
ハンス・ジマーのどぅーーん…って音がないのどうなるのかなと思ったけど、すごいよかった!
・全編通して、ちょっと電気的なビリビリしたサウンドも、逆再生みたいな奇妙な音も、緊張感のある弦の響きもピタッとストーリーにハマってた感じ

 

◆ニールの正体

・ニール=マックスの説も初見全然思いつきもしなかったですけど!!??
・みんなほんとにすごいな どういう頭してたら気付くんだ…

・確かに「セイターが死に場所を選ぶのならどこ?」っていう質問に答えたとき、なぜ即答できる?と聞かれてはぐらかしたのは変だなと思ったんだけど、「その伏線回収されなかったな」と思い返すこともなかった
・あまりに情報量が多すぎて

・観客席から爆弾を回収してるときに名もなき男を助けてくれた人が、5円玉(としか言えない)を持ってる人=ニールだっていうのも全く気付かずに観終わってた
・そんなん映ってたっけ!??よくみんな覚えてるな
・みんなほんとにすごいな(2回目)

 

◆美しい人たち

・後部座席からハイヒールで前方座席の横にあるドアロックを解除するなんて真似、デビッキ様のおみ足の長さがなけりゃとてもできませんって
・デビッキ様が毎秒お美しくて一瞬一瞬を「このシーンを永遠に保管したい…」と思いました

アーロン・テイラー=ジョンソンが出演しているという情報は得ていたはずなのに最後まで全然気付かなかった
・誰だっけこの瞳の綺麗な人…見たことあるんだけど…ってずっと思っててクレジット見て「あーー!!?」ってなった
・見るたび印象が違い過ぎる、すごい人だ…

 

◆ありがとう親切設計

・空港での名もなき男vs黒服の男、廊下の表現がめちゃよかったよねえ~!!

・一本道の廊下で戦ってもらうことによって、2人が廊下を進行していく速度と向きを表現できる…
・後半で今度は黒服の男として潜入すると廊下を逆進行していくのでより分かりやすい
・大変親切設計でした

・最終戦で赤チームと青チームに分けてくれたのも親切設計なのはわかるんですが
・すみません何が起きてるのか全然わかりませんでした
・観終わってからようやく「そういえば窓越しにセイターに尋問されるシーンも赤と青だったな」って思い出したけど時すでに遅し…

 

◆セイターまじで悪

コッッッワ 怖かった…
当たり前だけど直前の予告編で見たエルキュール・ポワロ(私の永遠のヒーロー)と全然違う…

ケネス・ブラナーさんを観たのが3~4作くらいしかないから、こういう怖くて嫌な役やると凄まじいんだな!!と驚いたんだけど、
本人も「これまで演じてきた中で最も邪悪な人物」と言っててちょっとホッとした。(パンフ参照)

同じくノーラン監督が「人類最悪の存在」って言ってるのもちょっとホッとした。(こちらもパンフ参照)
ノーラン作品の中でここまですげーー悪というか、シンプルに「どけ私がこいつをコロコロする(婉曲表現)」と思ったのは今までなかったから…

TENET以前だと「インターステラー」のあの人が一番だったかな?
と思いますが(公開当時テメーー!!って思った)、でもあの人はかわいそうな部分もあるので…

セイターはまあなんか 本人いろいろ思う所はあったんでしょうけど 無理です私の中のジョン・ウィックがこいつをコロコロすると言っているので

「生命の大半を滅ぼす」という意味でアベンジャーズシリーズのサノスとも比べられるだろう悪役だけど、
私の殺意ベクトルで行くと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.2」のエゴと近かったですね。
サノスは一応世界の存亡とかを考えた上で自らの正義に従って行動してるけど、エゴの行動原理は本当に文字通り己の存在のみを配慮したものなので…
思い出したら新鮮にムカついてきたな…

 

◆女性の描き方

アップデートされてないんかーい!
というツッコミを鑑賞前に多々見かけたので「どんなことになってるんだ…」と最悪の想像をしながら見たのですが、想像したほどではなかった…かな…

確かに、「こんな女性の描き方、今までやってこなかったよね!」というのが出てきて当たり前のようになってる2020年において、目新しさはほぼゼロと言ってよいかと思います。

あと虐待シーンはノーラン作品には珍しくてびっくりしたし普通に怖いし、もうちょっと配慮のある描き方はいくらでもできたじゃん~という意見には同感。

序盤、拉致された名もなき男の受ける拷問が機関車の影に隠れて見えない…
っていうの直接的じゃないのに怖くてよかったから、セイターからの虐待シーンもあれくらいひねれるとよかったですね。

一方でキャットという人が憧れた、

「夫の支配下にある船から身一つで羽ばたき、自由の海へと旅立つ女」
…は未来のキャット自身だった。

というのは2020年においても十分に力を持つし通用する表現だったと思います。
作品のテーマに関わってる部分については後述。

これは単なる私の希望的観測だけど、
いずれノーランは女性主人公の映画を撮って、今までのノーラン作品には出てこなかった女性の描き方を見せてくれるんじゃないかなと思います。ていうか見せてくれ。
人間や人間の愛を映画で語るのが好きなら、女性は人間なので避けて通れない主題のはず。
今後の楽しみの一つとして待っています。

 

◆綺麗に反転する世界

本作について「セイターをキャットに殺させなくてよくない?」という指摘があって、
指摘は一理あるなと思うんだけど、テーマ的に意図してる部分もありそうだよな~とも思っています。

メインの登場人物3人は、作中の前半と後半で”反転”が起こってるなと思うんだけど…

  • 名もなき男
    【前】冒頭で目的も何も知らないまま任務につく
    【後】ラストで全てを知り、黒幕として今後暗躍していく

  • キャット
    【前】夫の支配から抜け出せない。海に飛び込む女を見てその自由を羨む
    【後】夫から解放された。身一つで羽ばたいて自由の海を泳いでいく

  • ニール
    【前】名もなき男よりも多くの情報を持って隠したまま現れる
    【後】名もなき男から自分の行く末を知らされることなく="無知"のまま去っていく

上記はあくまでその一部で、主に名もなき男には大小いろんな”反転”が発生してると思います。
乱闘する黒いマスクの男は逆行した自分だったとかね。

で、セイターがキャットに撃たれるのも”反転”シリーズの一つなんじゃないかな?と思うんだよね…

  • セイター
    【前】キャットに対し圧倒的に有利な状況下でキャットの身体に弾丸を撃ち込む
    【後】キャットに対し圧倒的に不利な状況下でセイターの身体に弾丸が撃ち込まれる

…とすると、キャットが銃でセイターを撃つのには理屈があるのかなと思ったのでした。
撃った弾丸は向きを反転し我が身に返ってくる。
まあこの説だけだと「撃つのは一理あっても殺すまではいかなくてよくね?」は解決できてないんだけど…

血の気の多い観客なので「よく殺した!!!!」って勝利の拳を上げてしまいまして、これ以上はまだ考察できてません。
とりあえず海の藻屑になれセイター。骨の欠片も残すな。

 

最後に自分の記録用として、初見でわかんなかったことを箇条書きにしました。
ずっと「??」って言ってるだけなので読まなくていいやつです。

☆☆☆わかんなかったことリスト☆☆☆

●冒頭のオペラ偽装テロ事件

・名もなき男が捕まっちゃったのはなんで?誰かに裏切られた?
・名もなき男が脱出させてあげた男は結局誰だったの?

●ニール初登場時

・初めて顔見せて登場する時、妙に印象的なヴァー…ヴァー…っていう音楽がかかってたんだけどあれは何を表現してるんだろう?
・ちょっと怖くてひりひりしてよかった

●大混戦カーチェイス

・パーツを受け取ったのは誰だったの…!??

・解説読んだら横転してた車が受け取ってたって書いてあった つまり名もなき男が受け取ってた…
・順行でカーチェイスに参加した名もなき男は、ケースだけセイターに投げて、パーツは誰だかよくわからん横転逆行車に投げてたのか…?
・すごいギャンブルだな

・初見時、キャットに銃を突き付けてるセイターが逆行してるのも分かってなかった
・窓越しの尋問の後にセイターが逆行し始めたのでようやく「あーさっきのは車だけじゃなくてセイターも逆行人物だったの!?」ってなった

●窓越しに尋問するセイター

・キャットの腹を撃って情報を聞き出すとき、セイターはちゃんと喋ってたから順行なんだよね?
・で情報を聞き出し終わったから回転ドアを抜けて、逆行状態になってもう一回さっきのやり取りをさかさまに繰り返して…るから「もう一度撃つぞ」って言っちゃってるんだよね?あれ?
・あのとき名もなき男が窓越しに見てたセイターは逆行??順行??
・なんでセイターの声が二重に聞こえてるの?「記録」ってこと?

●黒幕

・プリヤは黒幕が名もなき男だって知ってるから「黒幕は誰だ」って聞かれたときに答えなかったの?プリヤは結局どっち側の人??
・"黒幕"は結局何をしてる人なの?
・9つのパーツを集めて逆行させようとしてる人?それを阻止しようとしてる人?プリヤは9つを集めるの阻止する側の人なのかと思ったら急に9つが集まるのはちょうどいいみたいなこと言ってたよね?

・最後なんでプリヤはキャットを殺そうとしてるの?TENETのことを知りすぎたから?

・偽の毒薬を飲んだ名もなき男を回収してTENETのことを説明した人とか、逆行弾を研究してるバーバラとかは誰の指示であれをやってるの?黒幕?

・結局なんで「TENET」が合言葉なの??決めたのは誰?未来の名もなき男?

●最終戦

・全体的にマジでわからんかった
・なんで二手に分かれたんだっけ…?
・挟み撃ちにする方が敵チームを追い込めるから?どっちかが爆発を止めさせないチームで、どっちかが敵チームを足止めするチームとか言ってたっけ…?

・ニールは爆発時点から10分を逆行してた
→途中で名もなき男たちが閉じ込められちゃったことに気付いて回転ドアまで走って順行になった
→地下に入る直前の名もなき男たちを車で追いかけたけど止められなかった
→ので最終的に「爆発時(10分)」の時点で二人を引っ張り上げるための準備をした
…ってことで合ってる?

・事前にRTで何となく察してたこともあり、あの「蘇る死体」が撃たれた瞬間に
「この人ニールなんだ」
とわかったんだけど…
・そのせいでここで「ニール地上と地下で二人いるが????」ってなって大混乱したのだった

●蘇る死体(ニール)

・彼はいったいいつどこから来たの…?
・ニールの最期ってことなんだよね?

・「これは俺にとって友情の終わりだ、あんたはちょうど中間地点」
と言ってヘリに乗って行ったニールは今後も少し任務をして数年ののちにあの「蘇る死体」になりに行く日が来るの?
・それともあのニールはあの直後に死にに行っちゃうの??
・それはこの後ニールがその場に至って気付いてそうしたのか、それとも"黒幕"である名もなき男がこの先いつの日かニールにそれを指示するの?
・ニール死なないでほしい…死なないでほしすぎて泣いてる

・私の好きな少女漫画に赤石路代の「その日は金曜日」という作品がありまして、あれのおかげで何が起きたのかは分かったんだけど、
「いったいいつのニールなんだーー!?」と大混乱だった
※『フェアレディは涙を流す』っていう文庫版に入ってるので読んでみてください

・「蘇る死体」が銃撃の後何をしたのかも全然見逃した
・鍵を開けていってくれたんだね!!
・あの場面、人が何人もいるから今3人?4人?って全然わからんかった

●最後のアイヴスとのやり取り

・全体的によくわかんなかった
・なんで銃を向けたの?
・「生きては戻れない任務」ってどういうこと?9つの部品を3人でお互いに知られないようにいろんな時代のいろんな場所に隠そうねってこと?
・ニールとアイヴスはあのあとどこへ向かったの?

エントロピー

マジで何?

☆☆☆わかんなかったことリスト無限に出てくるけど、とりあえずここまで☆☆☆

初見の感想はこんな感じかな…ゼエハア…

いろいろ言ってますが一言で言えば「面白かった」です。IMAXで観てよかった~!
「あと3回観ないとわかんない」ってよく言うんですがこれはあと3回観てもわかんないかもしれん。でも観る~!